出版社が不況にあえいでいると云う。だが実際のところは,なにもしていないだけだ。究極的に生き残ることができる出版の条件は,紙を捨てること。流通システムを作ること。ただ,それだけだ。
quote:マック関連の話題を取り上げる週刊のメールニュース,TidBITSを1990年から続けているアダム・エングスト氏は,ようやく有益な出版のビジネスモデルに行き着いた。それはPDFファイルでタイムリーに,小額で電子書籍をリリースすることだ。電子書籍は5ドルか10ドルで,無料アップデートも付く。プリンターで印刷することもできるようにデザインされ,ウェブへのリンクもたくさん埋め込まれている。また,PDFには数々のデジタル著作権管理メカニズムが用意されているが,TidBITSではいかなるコピー防止措置も取り入れていない。「問題を引き起こすだけで,導入する価値がないからだ」とエングスト氏は述べている。
CDが100円で,ネットでボタンを押した数時間後に必ず手に届くようなら,誰がファイル共有でMP3を落としたりするだろうか。とは云っても,そんな流通システムを作れません,というならまぁ理解できる。だが,iTunes ミュージックストア(iTMS)は実際にそれに近いシステムを提供して,デファクトスタンダードになるほどの支持を受けている。もうすでに,流通システムはできている。出版では,TidBITSが,小規模ではあるがやり始め,ある程度は成功している。もちろんTidBITSは,無料の週刊メールを出し続けている上で,成功していることも付け加えなければいけないが,大手出版社ならすぐにでも始めることができるはずだ。
そしていちばんのポイントは,なにもコピープロテクトを設けていないということ。TidBITSは100%そうだし,iTMSも,iTunesをパソコンで使ってiPod以外の携帯プレイヤーに興味がない,という人ならまったく問題にならないコピープロテクトである。DVDビデオが本当に普及し出したのも,DeCSS後に手軽に使えるツールが出回ってからであるのも偶然とは思えない。コピープロテクトで売り上げが増えることは,過去に一度もないし,これからも絶対ない。CCCDを使う日本の音楽業界は,格好のいい例だ。なんだったらネット上ででも,コピープロテクト付きとコピープロテクトなしの同じ作品を売ってみればいいのだ。1時間で結果がわかるだろう。いったい誰のためのプロテクトなのか。つまり結論は,なんのプロテクトもかけず,ネットの利点を生かして低コストでの配信に注力する,これだけだ。音楽や動画で,それを最初にやるのは,誰か。いままでの音楽業界,動画業界をすべて潰しても,それに移行すればいい。ただ,それだけだ。
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